「介護の市場規模」を知ろう!

「2025年問題」の項でお伝えしたように日本は、全人口の「4人に1人が後期高齢者」という超高齢社会に着々と向かっています。そうした中で、介護の仕事は文字どおりの成長産業と言えるのでしょうか。まずは日本の社会全体から俯瞰して見ていき、新たなムーヴメントにも目を向けてみましょう。

2025年には100兆円規模が見込まれる高齢者市場

日本の人口は2008年の1億2802万人をピークに、減少局面に入っています。平成28年版高齢社会白書によれば、2015年10月時点で日本の総人口は1億2711万人で、そのうち65歳以上の高齢者人口は3392万人、高齢化率は26.7%と、こちらはますます加速を続けています。つまり、「市場=人口」と考えれば、日本の国内市場は全体としては縮小していますが、高齢者市場については、人口動態予測からしても少なくとも2040年までは増加する見通しと言えるのです。

高齢者向け市場は、「医療・医薬」「介護」「生活産業」の事業分野に3分されます。マーケットとしての成長予測は、2007年の62.9兆円から2025年には61.0%増の101.3兆円、うち「介護」については6.4兆円から15.2兆円の137.5%増と、2倍強の成長 を見込まれています。また、「医療」と「介護」は国の社会保障制度に支えられていますが、社会保障給付費の2015年から2025年の予測への推移を見ると、福祉全体では21兆円→28兆円、介護だけでは10兆円→17兆円、医療は37兆円→48兆円へと増大が見込まれています (国民医療費は半分強が65歳以上による)。

出典:みずほ銀行 みずほ産業調査 (https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/bizinfo/industry/sangyou/index.html)

出典:みずほ銀行 みずほ産業調査 (https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/bizinfo/industry/sangyou/index.html)

出典:財務省ホームページ(http://www.mof.go.jp/budget/fiscal_condition/related_data/sy014/sy014q.htm)

出典:財務省ホームページ(http://www.mof.go.jp/budget/fiscal_condition/related_data/sy014/sy014q.htm)

1人の高齢者を支える現役世代が2.3人から1.3人へ

もう少し「介護の仕事」に話を近づけてみましょう。高齢者を支える社会の構図を見てみると、2015年には高齢者1人に対して、15~64歳の現役世代2.3人で支えていますが、2060年には1.3人で1人の高齢者を支えることとなります。

これだけ高齢者の実数も割合も増えていくということになると、「高齢者の見守りや世話=介護」を、それぞれの家族の問題としてではなく、社会として支えていく仕組みが今以上に必要になります。政府は「介護離職ゼロ」を掲げて、企業に勤める従業員が介護休暇を取得しやすい法整備を進めるとともに、介護職を離職した人材の呼び戻しや新たな人材の育成、介護現場での処遇改善や施設の整備の支援などの対策もとっています。

介護サービスを必要とする要介護・要支援認定者数は、2025年には65歳以上の2割にあたる716万人に上ると試算されており、うち252万人は要介護3以上で、食事・入浴・排泄の介助が必要です。いっぽう、特養や有料老人ホームといった介護施設の定員数は2014年時点で約97万人と、要介護・要支援認定者の16%をカバーする程度しか整備されていないのが実情であり、更なる整備が必要と言えるでしょう。

「独居老人」と言われる、一人暮らしの高齢者の増加も介護サービスを考える上で見逃せない要素です。推計値ですが、2015年時点で65歳以上の単独世帯数は600万件に上り、高齢者人口に占める割合も男性で10数%、女性では2割強にもなっています 。これもまた増加の一途をたどっており、在宅における見守りの強化といった介護サービス提供が求められます。

出典:内閣府ホームページ(http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2016/zenbun/pdf/1s2s_2.pdf)

出典:内閣府ホームページ(http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2016/zenbun/pdf/1s2s_2.pdf)

2500万円近くの貯蓄を持って、健康な余生を望む高齢世帯

頼もしいのは、高齢者全体の暮らし向きには余裕が見られることです。「家計にゆとりがあり、まったく心配なく暮らしている」人が2割近くもおり、「ゆとりはないが、それほど心配なく暮らしている」を含めば7割前後、80歳以上では実に8割もの方 がそう答えている状況です。

これには裏付けもあり、世帯主の世代ごとの貯蓄・負債現在高や持ち家率といったデータ が証明しています。60代、70代以上の貯蓄高は2500万円近くと、どの世代よりも群を抜いています。負債額も少ないことから、純貯蓄額も十分で、消費や老後の生活維持に備えることができると言えるのです。また、90数%という持ち家率から、終の棲家を確保できている、あるいは持ち家を売却・担保にすることで居住系介護施設への入居費用に充てられる可能性も考えられます。

また、貯蓄の目的については、「病気・介護の備え」が62.3%とダントツで、それに次ぐ「生活維持」の20.0%を大きく引き離しています。この質問は60歳以上を対象に行われたものなので、いわゆる「アクティブシニア」と呼ばれる元気な高齢者も含めた回答です。余生を健康に過ごしたいというのがこの世代の一番の欲求であり、そのための予防やケアにはまだまだビジネスチャンスが広げられる余地がありそうです。

出典:内閣府ホームページ(http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2016/zenbun/pdf/1s2s_2.pdf)

出典:内閣府ホームページ(http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2016/zenbun/pdf/1s2s_2.pdf)

出典:内閣府ホームページ(http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2016/zenbun/pdf/1s2s_2.pdf)

出典:内閣府ホームページ(http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2016/zenbun/pdf/1s2s_2.pdf)

目の肥えた「団塊世代」を迎えて、介護サービスにも差別化・個別化が

これから老後期に指しかかろうとしている団塊の世代は、高度成長期やバブル経済期を経験してきており、消費の喜びを身をもって知っている世代と言えます。実際、定年後に地域社会との結びつきを求めての「コミュニティ回帰」や、「終活」という身終いに向けた積極的な準備も浸透してきています。必ずしも介護保険にとらわれずに、地域との潤滑油であったり生活を見直す導きとなるような動きを、介護の仕事の中でも取り入れていけるのかもしれません。

さらに団塊の世代の特性を考えれば、欲しいサービスには対価を支払い、だからこそサービスレベルに対する要求も高く、細分化・個別化したサービス提供に価値が見出されるでしょう。介護保険給付によって与えられるサービスは「当然の権利」として、相応なレベルを要求されるでしょうし、介護保険給付に限らず、プラスアルファの自費によるサービスを要望されるかもしれません。

2016年9月、公正取引委員会が「介護分野に関する調査報告書」を発表しました。その背景には、同年6月に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」において「介護サービスが利用できずやむを得ず離職する者をなくすとともに、特別養護老人ホームに入所が必要であるにもかかわらず自宅で待機している高齢者を解消することを目指し、介護ニーズに応じた機動的な介護サービス基盤を整備し、地域包括ケアを推進する」として、高齢者の利用ニーズに対応した介護サービス基盤確保への取組がなされていること、そして、同じ日に閣議決定された「日本再興戦略2016」でも介護分野について、生産性向上とともに公的保険外の介護予防や生活支援等のサービス市場の創出・育成による高齢者の選択肢の充実が求められていることがあります。

認められれば介護産業の起爆剤に? 「混合介護」の可能性とは

この調査から導き出されているのが「混合介護」です。つまり、介護保険の対象となるサービスと合わせて、保険の対象外で利用者が全額を自己負担する保険外サービスを提供できるような、弾力化措置が求められたのです。

現在、厚生労働省の見解では、保険内サービスと保険外サービスは明確に分ける必要があり、事業者が同時・一体的に提供することはできない状況です。例えば、夕方訪問介護で訪れたヘルパーは利用者のために食事を作ることはできますが、帰宅が遅くなる同居家族向けの食事は用意できません。また、特定のベテラン職員による介護サービスを求められても指名料や技術料などは取ることができません。

上記はほんの一例ですが、混合介護を認めれば事業者はニーズに応えて多様な保険外サービスを開発・提供することができ、収益につなげられます。それは介護職員の賃金増やひいては介護人材不足にも良い影響を及ぼすと考えられます。指し示されたばかりの方向性なので実現に向かうかは不明ですが、介護産業に良い循環をもたらす示唆として注目です。

介護の現場に入り込むITやAI、ロボットで発想の転換も

また、ITや通信機器との親和性の点でも、団塊の世代は従来の高齢者層と大きく異なります。仕事でコンピュータを駆使・活用してきた世代なので、これまでの高齢者のように孫とメールや写真のやり取りをしたいから、あるいは介護施設でのレクリエーションで教わりながら触ってみたら面白くてといった、やや受動的な使い方から、より積極的に自身で情報収集したり経済活動に用いたりということが普通になってくるでしょう。

一例ですが、65歳以上の高齢者世帯でネットショッピングを利用した割合を見ると、この10年で4倍近くの伸びを見せ、2015年は13.6%となっています。実際にネットショッピングを利用しているジャンルでは、65歳未満世帯と比較すると「医薬品・健康食品」「保険」「贈答品」「食料品」などが多く 、ここでも健康志向の消費行動が見て取れます。
これからは介護施設への入居に際して、自前のモバイルデバイスを持ち込む利用者も出てくるかもしれません。体は不自由でも、そうした手段を持つ高齢者であれば、提供する介護のサービスにもより幅が出てくるのではないでしょうか。

高齢者をサポートするAI(人工知能)やロボットの開発も、急速に進んでいます。背景としては2013年に経済産業省が開始したロボット介護機器開発・導入促進事業というのがあります。そこでは、移乗介助、移動支援、排泄・入浴支援、見守り支援が重点開発分野として挙げられ、実際にベンチャーも含めた各企業における開発や製品導入がここに来てたいへん進んできているのです。

それには、高齢者自身の動きや歩行をアシストする製品もありますし、介護者の肉体をサポートして介助をしやすくさせるものもあります。また、自然な動きを実現するロボットに会話機能や相手の顔認識機能を備えて、コミュニケーションや癒しに役立てる製品もあって、入居系施設等での活用も始まっています。

数字の裏づけで市場を捉えるだけでなく、社会保障制度に基づきながらも可能な範囲で発想を豊かに、可能性を広げられるのが、介護産業と言えるかもしれません。

出典:統計局ホームページ(http://www.stat.go.jp/data/topics/topi975.htm)

出典:統計局ホームページ(http://www.stat.go.jp/data/topics/topi975.htm)

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